私がうとパンさんにお会いしたのは9年前ぐらいだろうか。 その頃はまだ『ショコラ』という名前で 宇土のショッピングモールピアの中に合ったと思う。 職人のプライドを持ち、どのパンにも手を抜かない。 だからどのパンも美味しい。手を抜かないのが当たり前? たしかに当たり前と思うかもしれない。 でも、デフレのこの世の中で原価を無視して 原材料にお金をかけて値段を上げないということができるのか。 誰にもできることじゃない。 塩パン一つとってもバターの香りとしっとり感にあふれている。 サクサクとしっとりと2つの食感を楽しみつつ バターの香りに包まれる。 こんな幸せなパンを作るのは並大抵の苦労じゃない。 これだけ美味しいのは原材料費で大きく響く バターをふんだんに使うからだ。 技術も去ることながらやはり原材料にも手を抜かないのは なかなかできそうでできない。 美味しくて人生を変えたと言ったら大げさだが、 フランスパンの本当の美味しさを教えてくれたのもうとパンさんだ。 フランスパンといえば、全体的にモチモチとして ちぎりにくいコシが特徴と思われるだろうが、 本当はパリパリザクザクの皮と しっとりとした中身の2つの違った食感が美味しい特徴なのだ。 もちろん、焼けた香ばしさは言うまでもない。質が悪いフランスパンは、 外側の皮が固くて中もポソポソしていたり、 逆に皮が湿り気を帯びていてなかなか噛み切れず イライラしたりするかどちらかだ。悲しいかな、 そういうパンしか食べてこなかったために、 フランスパンには恥ずかしながら少々蔑んだ目で見ていた。 うとパンさんのフランスパンはパリパリザクザクの皮で本当に美味しい。 前歯を当てた感触は堅いのだが、バリバリと音を立てたかと思うと 歯がグイグイと進んでいくのだ。その後は奥歯でザクザクっとした 食感とこんがりと小麦の焼けた香りを楽しむ。下手な例えだが、 まるでひとつの新しいスナック菓子のような感触がそこにはある。 私の上の娘は実は2歳になるまで歯が前歯の上下4本しか生えなかったのだが、 その娘を車にのせたときに暇つぶしというか、 泣かせないためにうとパンさんのフランスパンをあげると、 中身を残して外側の皮だけをずっと食べ続けていた。 コシがあるとは言え柔らかい中身があったのに無視して ずっと皮だけを食べ続けていたのだ。歯が前歯4本なのに。 子供は本当に正直で美味しいものを選ぶ力がある。 皮の無くなったフランスパンは、 家についてから私の食事になったのは言うまでもない。 中身はもっちりしていて別のパンのようである。 何もつけずに食べるとまたこれも幸福の味がする。 今でも上の娘はうとパンさんのフランスパンが大好きで、 良くないことではあるが、うっかりすると皮だけがいつの間にか無くなる。 明太フランスもガーリックフランスも大好きだ。 香ばしさと噛めば噛むほど出てくる小麦の旨味が美味しいから。 明太フランスに使う明太子は魚屋から毎回取り寄せていると聞いた。 ガーリックフランスは大量のバターとニンニクでものすごく香ばしい。 これで美味しくないわけがない。 娘は普段辛いものが嫌いで少しでも辛ければ全く口にしなくなるのに、 この明太フランスだけは別格なんだそうだ。 辛くても我慢して食べると。もっとも、 バターのお陰で大人は全く辛味を感じないのだが。 フランスパンでこれだけ感動するのだ。他のパンは言うまでもないだろう。 最後にチーズオニオンブレッドの感想を書きたい。 柔らかいバターたっぷりの生地に玉ねぎのスライスと チーズとベーコンがたくさん入っている。 ものすごくボリューミーで満足感がある。 噛むたびにチーズと玉ねぎ、 ベーコンの味と香りがひろがりバターの旨味がそれを支えてくれる。 朝ごはんにこれを食べると一日元気が出て幸せな気分になれる。